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第79回 春来 枝垂桜の遠足「神山文化巡礼」

日程

  • 2019年3月30日(土)-31日(日)

案内人

  • 嘉藤笑子(武蔵野美術大学/跡見学園女子大学 会員)

解説者

  • 阿部悦弘、粟飯原康史(NPO神山さくら会)
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@イサムノグチ彫刻庭園美術館

徳島県神山町は、地方創生トップランナーの自治体として、行政およびまちおこし関係者には高い関心を集めてきました。全国が過疎問題で困惑しているなかで、唯一人口転入が転出を上回ったことで「神山の奇跡」と言われています。IT企業の誘致、サテライトオフィスといったベンチャー企業の拠点、『神山塾』という若者たちの雇用促進事業などを通して地域再生を戦略的に行ってきました。多くの場合、まちづくりや地方創生から注目されていますが、その出発点は、神山アーティスト・イン・レジデンスによるアートとの出会いからになります。すでに20年間を超える本プログラムを通して、山間部や街中にアート作品の常設展(野外)の見学などができます。

また、世界遺産の有力候補:四国巡礼の12番札所「焼山寺」や「雨乞いの滝」、温泉といった観光資源も豊かな場所であり、本遠足によって過疎地域の文化資源の可能性(有用性・波及力)を探る機会になると考えています。特別な文化施設がないままで継続的な文化事業を開催してきた実績やNPO主導による文化政策も探求できる機会になると思います。

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AWeek 神山

神山町は、日頃より自治体や企業の視察ツアーが非常に多いにも関わらず、長期継続事業であるアートに関心が少ないのが残念に思っています。この機会に地域のアートフェスティバルとは異なるかたちで進展する神山の魅力を掘り下げていきたいと思います。

 また、初日にはイサムノグチの彫刻庭園美術館を訪ねます。イサムノグチは、神山町で産出される青石に魅了され、最初のランドスケープデザインとしてパリのユネスコ本部日本庭園に青石を使ったモニュメントを設計しています。本美術館は、住居、アトリエ、蔵、彫刻庭園を兼備する1964年から終生まで日本の制作活動した場所です。

報告記事三谷八寿子 MITANI Yasuko(アーバンデザインスタジオLLC

 一日目、最初に訪れた「イサムノグチ彫刻庭園美術館」(@香川県高松市牟礼町)は、1969年にイサムノグチが日本での拠点として開設したアトリエ・住居等を、1988年の没後そのまま美術館としたもの。パリのユネスコ本部の日本庭園に設置されている作品は、神山町産出の青石を使ってこの地で制作されているとのこと。この日は生憎の雨だったが、彫られた石の表情は豊かに映えて、美しい民家、地形の造形と、時間が止まったような風景そのものを作品として感じることができた。

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B神山町の民家リノベーション

次に徳島県神山町へ移動。鮎喰川を眺める地に位置する、サテライトオフィスとその向かいに立地する滞在施設「Week 神山」(A)を訪れた。「Week神山」には、交流棟という食事をする交流スペースがあり、もてなしてくれるスタッフがいる。神山町のメインストリート(B)を散策。移住したレストランや靴職人の方のお話しを聞いた。1人1人の営みは小さなものかもしれないが、リノベーションされて新しい機能をもつ店が軒を連ねることで通りに新しい魅力をもたらしている。

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C寄井座とインスタレーション

東京の IT企業のサテライトオフィスとして民家を改修して整備された「えんがわオフィス」の向かいには、昭和4年に建設された木造の芝居小屋「寄井座」(C)がある。資金提供者の名前が記された天井がとても生々しい。閉鎖されていた「寄井座」は2007 年よりNPO グリーンバレーにより再活用され、その後、毎年アーティスト・イン・レジデンスのインスタレーション会場として使われている。

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D焼山寺

二日目は、まず神山町の歴史的資源でもある四国遍路第12 番札所「焼山寺」(D)へ。杉の木立の中を行く「遍路道」沿道には寄進された数々の仏像があり、眼下に広がる里山の風景と整備された「遍路道」に昔の山越えの大変さに思いを巡らした。
再び麓に下りてフード・ハブという地産地食の拠点となる食堂とショップ「かま屋ショップ」に立ち寄った後、遠足のお題となっている神山町の枝垂桜を見に行った。枝垂桜は、2003 年からNPO 神山さくら会により神山街道(E)を始め、道路沿道等に植栽され、維持されている。沿道の傾斜地一面に咲き乱れる枝垂桜、農家の方が個人で植樹し運営している、500 本の枝垂桜からなる「ゆうかの里」など、県外からも人を集める見事な桜の名所がつくられている。

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E神山街道と枝垂れ桜

1999 年から開催されてきた「神山アーティスト・イン・レジデンス」の作品は、大粟山(F)に多く見ることができる。杉の木立のなかに点在するアートは、時間の経過のなかで風景のなかに溶け込んでいる。竹や木材、石などの自然素材は、その風合の変化も作品の仕掛けであり、その場所での存在感を静かに示しているようにも見えた。アートウォークのゴールは、オランダから移住したドキュメンタリー作家と日本人アーティストが開いた「神山Beer Brewery」(G)。

この2日間の遠足では、四国遍路札所や林業を生業としてきた歴史に由来する資源、「創造的過疎」として取り組まれているアートや就業場所等の様々な仕掛け、アーティストや起業者など「よそ者」が新しく「こと」を起こすこと、枝垂桜を植栽する地元の人々の活動、それらの化学反応が神山町の文化的環境の充実、町の多様な魅力につながっていることが感じられた。



行程

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F大粟山にある青石を使ったアート

<1 日目>
イサムノグチ彫刻庭園美術館(学芸員ガイド付き)60 分
フードハブ「かまや」視察 30 分
サテライトオフィス見学 リノベ+企業誘致などの視察 60 分








<2 日目>
「さくらや」⇒「Week 神山」
焼山寺参拝(駐車場代)約 30 分
ゲストハウス『作良家』視察 20 分
解説:粟飯原康史(実行委員会会長)ほか
神山アートウォーク(大粟山)+上一之宮大粟神社散策、約 90 分
神山 Beer(移住者アーティストによる醸造所 Beer Brewery)または「道の駅」30 分

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G神山Brewery


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